今年の初夏、緊急事態宣言が暫く解除された隙を狙って、「海の京都」と呼ばれる丹後半島を周遊する旅を満喫してきました。
今回は、素朴で懐かしい舟屋が並ぶ②「伊根の舟屋」の観光です。
昼食後、「天橋立」から約40分のバス乗車で「伊根の舟屋」のある伊根町に到着。伊根町は、人口約二千百人で、京都府で二番目に人口の少ない小さな町。
伊根の舟屋
海際に立ち並ぶ家々。まるで海に浮かんでいるようにも見える。伊根町には、このような「舟屋」と呼ばれる建屋が約230軒、伊根湾の周囲約5kmに沿って海を取り囲むように軒を連ねている。
伊根の舟屋は、1階が船着場、2階が住居や民宿などに使用され、現在でも海と共に暮らす生活の拠点になっている。
伊根湾は、日本海にありながら、南向きであり、その出入口に「青島」があることで波が穏やか、潮の干潮差が少なく、海が急に深くなっている等、漁業に有利な自然条件が揃っているようだ。
いくつかのグループに分かれて、地元ガイドと共に海岸沿いに伊根町の街を歩いてみる。
山と海との狭間の僅かな隙間で生活する、この地区独特の街並みが広がる。右手に見えるのは「吉村屋旅館」。
向井酒造
少し歩くと、京都・伊根の地酒「京の春」で有名な創業260年の蔵元「向井酒造」。日本で一番海に近く、日本で一番狭い蔵元らしい。
入口横には、立派な松。蔵元の雰囲気にもマッチしている。
道路にあるマンホールにも舟屋群。
道路側から、ある舟屋を拝見。舟屋の一階部分は、船を引き上げるため、十分な開口幅を有し、かつ床が傾斜し、接水している。
家屋の眼前には「伊根湾」が広がる。
透明度の高い海水。土蔵に描かれた家紋の鏝絵(こてえ)。鏝絵とは、漆喰を使って左官職人が鏝で壁に浮き彫りにした絵のこと。
別の舟屋では、船を収納することがなくなり、空いた一階スペースを洗濯物置場に利用している。舟屋を活用して海と共に暮らす人々の生活の一部を肌で体感。
こちらの土蔵にも鏝絵。
路線バスも運行している住民の生活道路。
昭和の前半頃にタイムスリップしたような素朴な街並みをさらに進んでいく。
家の境界の通路からも海が迫ってくる(笑)。
ふなや喜左エ門
「ふなや喜左エ門」さんの家にお邪魔する。
舟屋やその敷地は個人の所有物であり、所有者の許可の無い不法侵入は、刑法百三十条の「住居侵入罪」に該当。三年以下の懲役または十万円以下の罰金刑に処されることもあるので、個人旅行の場合は要注意!
内部は太い木柱が水平に渡され、簡素ながらも頑強な構造。
二階は、今で言うと「ロフト」のような感じ。
舟の収容場所。舟屋は、もともと船を海から引き上げて、風雨や虫から守るために建てられた施設で、木造船を使用しているため、それを乾かす必要があった。
網や漁具の置き場。南向きなので乾きも早く、漁師の仕事場としても好適。
今なお舟屋を活用して暮らす人々の生活があるからこそ、舟屋は色褪せることなく、魅力的な存在なのだろう。
古より変わらぬ伊根湾と周囲の自然に囲まれた環境で、素朴ながらも自然の恵みと共に暮らしている住民の生活を垣間見て、自分も少しは精神的に豊かになった気がした。
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